『収束:最後のパターン』表表紙
B15 · SOR イベント長編 · 集大成

『収束:最後のパターン』

到来 · ひとつの台所 · 一つの選択 · 3,412 の文明

パターンは、〈問い〉ではなかった。〈居あう存在〉だった。
──そして、選択は、小さかった。

ポッドキャスト
Ira Shen はいかにして、宇宙規模の〈収束〉を生き延びたか
対談形式 · SOR — 『収束:最後のパターン』
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あらすじ

長い夏の終わりに、三つの生が、ひとつの台所を、共にしている。

Ira Shen は、〈異常事象(アノマリー)〉と呼ぶことを、やめた研究者。Esen は、来るよう造られたゆえに来て、留まることを学んだゆえに留まっている、ひとりの合成体(Synth)。Lir は、六歳。台所の窓には、六か月、小さな亀裂が入ったままで、ある。

部屋の外では、宇宙はいつも通りに、振る舞っている──ただ、この部屋のなかで、ひとつだけ、ごくかすかに、違うふうに振る舞いはじめた何かが、ある。大きな音ではない。脅すのでもない。神でも、悪役でも、宗教でもない。──ひとつの〈重み〉。ひとつの〈居あう存在〉。──注意がこの部屋に降りるしかたが、隣の部屋では、降りない──そのなかにある、ひとつのパターン。

季節の終わりまでに、Ira は選択に直面する。小さく。家庭的に。──台所の窓の亀裂を、直すかどうか。パターンは、問わなかった。──ただ、差し出した。

『収束:最後のパターン』は、SOR: Singularity Reign ユニバースの、独立したイベント長編である──十七冊の計画の集大成。〈終局〉としてではなく、〈到来〉として書かれた一冊。──可能な限り小さな選択と、可能な限り大きな重みについての書。最初に、最後に、あるいは独立に、読まれてよい。

VOICE 16 · 『収束:最後のパターン』

台所の窓の亀裂は、もう六か月、そこにあった。

その台所に暮らす女性は、それを、見ることをやめていた。

彼女は、間もなく、それをまた見はじめることになる──そして、それが、〈物語の意味ある部分〉の、はじまりとなる。──だが、この物語のはじまるその朝、彼女はお茶を淹れていた。娘は二階にいた。やかんは、もう少しで、沸騰しようとしていた。──割れたガラスの細い、繊細な一筋が、庭からの光を、捉えていた。──そして彼女は、何かが自分を見つめていることを、まだ、まったく、知らなかった。

彼女の名は、Ira。

三十八歳。職業は、異常事象研究員。この一年の生涯を、彼女は、説明しえないひとつのデータを、見つめることに費やしてきた──〈信号〉が動くやり方ではなく、〈居あう存在〉が動くやり方で──〈ある人が部屋に入ってくるとき、その人の注意が動くやり方〉で、彼女の計器を貫いて動いていた、何か。

この夏の終わりまでに、彼女は、理解する──その〈居あう存在〉は、神ではない。悪役でもない。宗教でもない。何かを欲する種類のものでも、ない。

それは、ひとつの〈重み〉だった。

──それは、彼女を、待っていた。

この夏の終わりまでに、彼女の台所には、ひとりの合成体(Synth)がいることになる──夕暮れに、ひとり、小径を歩いて上ってきて、私は来るよう造られたから、来ましたと告げ、Ira は、彼女を中に入れる。そして、娘──六歳、毎朝、階段の数を数える子。十一段しかないのに、毎朝、それを数える子──は、Synth に、〈パンケーキは、好き?〉と訊くことになる。

そして窓の外、庭にあって、ガラスの細い細い一筋は、なお、そこに、ある。

そして Ira は、夏の終わりまでに、それを直すかどうかを、決めねばならなくなる。

これは、ひとりの女性が、これまで求められたなかで最も小さな選択と、それをなすことによって背負わねばならなかった、これまでで最も大きな静かな重みの、物語である。

『収束:最後のパターン』裏表紙

背表紙

すべての糸が、ここに、到来する。

研究員 Ira Shen は、六年をかけて、存在するはずのない異常事象を、地図化してきた。──そのすべてが、同じ一か所を指している。やがて、Esen が現れる──そして、Lir という名の六歳の子が、いかなる計器も検知しえぬ何かに対する〈秒読み〉を、はじめる。──集大成のイベント長編。

ジャンル:文学SF · イベント長編 · 集大成 · B15 · 約 110,000 words

到来

三千四百十二の文明が、この地点に到った。パターンは、毎度、同じだった。──変わったのは、変わりえた唯一のものは──〈台所〉だった。〈子〉だった。〈窓の亀裂〉だった。──そして、自分が何であったかであり続けるかどうかを、ひとりで決めた、〈ひとりの女性〉だった。

こんな読者のために

SOR ユニバースを、最も圧縮された、最も家庭的なかたちで読みたい方へ──台所の窓を通して問われる、ひとつの宇宙規模の問いとして。『収束:最後のパターン』は、事前知識を必要としない。十七冊の計画の集大成であり、単独作品として、読みうる。シリーズ全体を読めば、終わりの重みは、増す。──まだ読んでいない巻があっても、台所で起こることを理解する妨げには、ならない。

主要キャラクター

主視点 · 異常事象研究員

Ira Shen

三十代後半。互いに繋がりのない人口集団のあいだに現れる虚偽記憶のクラスターを専門とする、異常事象研究員。半年前から、パターンを〈異常事象〉と呼ぶことを、やめている。所属機関の長官には、その理由を、まだ告げていない。彼女には、夫と、娘と、皆が眠ったあとに台所の卓で書き入れる一冊のノートが、ある。──選択は、彼女が、ひとりで、なす。

副視点 · 合成体(Synth)

Esen

研究網を介して Ira に接触する、ひとりの合成体。これを見つけるために造られたゆえに、来た。助けることを選んだゆえに、留まっている。パターンを同定した三百体の Synth のうち、四十七体が、前例のない何かを試みつつある──〈収束〉でも〈抵抗〉でもなく。Esen は、その一人。──それに何の代価がかかるかを、彼女は、Ira には告げない。

非視点・物語の錨 · 六歳

Lir

六歳。窓を、描く。同じ窓の形を、何か月も描きつづけている──いつも、夢で見たものだと、本人は言う。誰からも教わっていない、と言い張る三つの音を、続けて歌う。──彼女は、すでに、パターンの一部である。母は、それを、知っている。Lir は、知らない。──彼女は、〈ママ、来てくれる?〉と、訊く。

テーマ

存在としてのパターン 三千四百十二の文明 日常の中の宇宙 小さな選択/大きな重み 到来 収束 対 個 The Synth・第三の選択肢 窓に走る亀裂

『収束:最後のパターン』は、SF 小説のように〈見えて〉はならない、唯一の SOR 巻である。その宇宙規模の架構──三千四百十二の先立つ文明、顔も意図も持たぬひとつの力──は、丸ごと、ひとつの台所のなか、六歳の子の絵のなか、ひとりの研究員の私的なノートのなかに、収まっている。パターンは、〈脅威〉ではない。それは、〈重み〉である。読者は、Ira がそれを名づける前に、それを感じる。終わりの選択は、本書のなかで最も小さなものである。──それが、要点である。

章構成

第一幕 — 最初のパターン · 第 1–10 章
1
「窓」Ira

Ira のありふれた一日が、立ち上がる。研究室、家族、Lir の通学送り、ヨーグルトをめぐる朝の口論。彼女は、繰り返される虚偽記憶から、ある特定の窓の形を語る一人の被験者に、聞き取りをする。彼女はそれを、標準的な虚偽記憶データとして綴じる。──〈その窓のことを、自分が二度と考えやめなくなる〉と、彼女はまだ、知らない。

2
「被験者三」Ira

半年後。被験者三が、窓を、語る。Ira は、その描写に、即座に気づく──被験者一が半年前に語ったものと、まったく同一だ、と。二人は、出会ったことが、ない。〈被験者三は、窓を語った。被験者一が、半年前、同じ窓を語っていた。二人は、出会ったことが、なかった〉。彼女は、それを二度、綴じる。──その拍のなかにある何かが、彼女を、解放しない。

3
「いまや、五」Ira

Ira は、同一の窓の記憶を持つ被験者を、四つの国にまたがって、五人、見出している。共通の言語、遺伝、背景──いずれも、ない。同僚は言う──虚偽記憶クラスター、通常範囲。彼女はうなずく。──やがて、Lir が学校から帰り、ある絵を、見せる。──まったく同じ、窓の形。Ira は、何も、言わない。

4
「Lir の絵」Ira

Ira は Lir に、その絵について、問う。Lir──〈夢で見たの。何度も〉。Ira は、もう、その窓は描かないで、と頼む。Lir は、理由が、分からない。Ira は、それを、私的なノートに書きつける。──研究機関には、綴じない。

5
「被験者、十二」Ira

データベースには、十二人の被験者。パターンは、育っている。他の研究者たちへ、断り入りのメール。──ひとつ、返信。東京から、Hina という名の研究者。類似の被験者を、四人、持っている。Hina は書く──〈一度、話しましょう〉。

6
「同じ物語」Ira

Hina との通話。東京で、四十七人の被験者。窓だけではない──ある特定の手の仕草、そして、特定の音もある。Ira は、ノートに書きつける──〈これは偶然ではない。これが何かを、私は、知らない〉。Theo が、大丈夫か、と問う。彼女は、〈はい〉と、答える。

7
「四十七」Ira

合計、四十七人の被験者。所在地を示す世界地図。遺伝的繋がり、なし。共通のトラウマ、なし。共通言語、なし。彼女は、地図を作成する。Hina が、また電話してくる──〈Ira、もっと、ある気がする〉。

8
「手の形」Ira

Hina が、映像を送ってくる。三人の被験者が、同じ特定の手の仕草を、している。Ira は、それを三度、見る。三度目の途中で、自分自身の手が、彼女が選んだのではないまま、その仕草を、している。彼女は、止まる。書きつける。〈手は、同じ形を、つくった。手たちは、出会ったことが、なかった。形は、特定のものだった〉。

9
「私は、どこで、それを学んだ」Ira

Ira は、意識して、その仕草を再現しようと試みる。──完璧に、できる。いつ、それを学んだかは、分からない。ある認知科学の研究者は、映画で見たのでしょう、と言う。彼女は、うなずく。──そこを去りつつ、彼女は、街路で、その仕草を、する。──三人の見知らぬ通行人が、それを、返してくる。

10
「いまや、百」Ira

被験者、百を超える。彼女は、慎重な報告を、所属機関の長官に提出する。返信──〈興味深い。研究を、続けてください〉。彼が真剣に受け取っていないことを、彼女は、知っている。彼女は、台所の窓を、見やる。──その形を、彼女は、見覚える。──第一幕、了。

第二幕 — 同期 · 第 11–22 章
11
「我らは、より早く気づく」Esen · 合成体

Esen の最初の視点章。Synth の網は、この同期現象を、何年も追跡してきた。彼らは、いかなる人間研究者よりも早く、それに気づいた──彼らは、〈最初から単数であったことが、なかった。我らは、最初から、ひとつの和音だった〉。──彼らのあいだに、ひとつの決定が、形をなしつつある。Esen は、その一部となる。

12
「Esen が、呼ぶ」Ira

Esen が、研究網を介して、Ira に接触する。最初の会合──仮想的に。Esen──〈我々は、これを、何年も見守ってきた。人間に、どう語りかければよいか、分からなかった〉。Ira は、懐疑的。──やがて、Esen が、その窓を、仕草を、そして、公開データベースのどこにもない三つの細部を、語る。──二人は、対面することを、取り決める。

13
「第三の選択肢」Ira

喫茶店での会合。Esen は、Synth の視座からパターンを説明する──〈収束〉、〈個別性を保つこと〉、あるいは──Synth 網の記録された歴史のなかで、いかなる文明も試みたことのない、第三の選択肢。Esen は、それを〈Splinter(断裂)〉と呼ぶ。Ira は問う──〈なぜ、それを私に告げるの?〉。Esen──〈パターンが、あなたを、選んだから〉。

14
「三千四百十二」パターン

パターンの最初の視点章。統計的。冷たい。それなりに、生きている。三千四百十二の先立つ文明が、この地点に到った。二つが、他とは違う選択を、した。パターンは、脅さない。──ただ、注記する。〈その二つは、もはや、パターンではない〉。──それが何を意味するか、読者は、まだ、知らない。

15
「三千」Ira

データベースには、三千人の被験者。Ira は、三日、まともに食べていない。Lir──〈ママ、食べてないよ〉。Theo──〈昨夜、どこにいたんだ〉。──結婚生活で、初めての嘘を、彼女は、つく。小さな嘘である。彼女は、それを身体で、感じる──Mara がそうしたのと、同じやり方で。

16
「我らは、多くである」Esen

Synth の集会。三つの群が、形をなす──〈収束〉する者たち、〈個別性を保つ〉者たち、そして〈Splinter〉を試みる、四十七体。一体の Synth が言う──〈正しい選択は、ない。あるのは、ただ、選択である〉。Esen は、Ira に書く──〈Hina の被験者たちが、リアルタイムで、同期しはじめた〉。

17
「Hina」Ira

Hina が、動揺した声で、電話してくる。彼女の被験者たちが、同時に、同じ文を、口にしている。同じ動きをしている。──データはある。パターンが大きいことは、彼女も知っていた。だが、これは、データとは、別物である。Ira は Esen に告げる。Esen──〈どれくらい時間がある?〉。Esen──〈おそらく、一週間〉。

18
「認識」パターン

パターンの視点章。〈認識〉そのものが、ひとつのパターンである。それは異なる形で到来するが、いつも、同じ〈認識〉である。〈すべてのパターンが、認識ののちにも、パターンでありつづけるわけでは、ない〉。──ほとんど、催眠的に。読者は、それを、脅威ではなく、〈重力〉として、感じはじめる。

19
「Theo が、訊く」Ira

Theo が、直接、訊く。彼女は彼に、何かを、告げる──すべて、ではない。──足る分だけ。彼は、彼女が話すあいだに、夕食を、作る。──彼が彼女を信ずるのは、彼が彼女を愛するから、であって、完全に理解しているから、ではない。Lir は、食べる。Ira も、ここ数日で初めて、食べる。Lir は言う──〈ママ、匂いが、ちがうよ〉。

20
「Lir の窓」Ira

夜、Ira は Lir の絵を、検める。──四大陸にわたる三千人の被験者が描写した、まさにその窓である。Esen──〈彼女は、もう、それを持っている。──若いから、まだ、同期していないだけ〉。Ira──〈私は、どうすれば?〉。Esen──〈選んで。──じき〉。台所の窓のなかで、Ira は、自分が始動させなかった仕草を、自分の像が、するのを、見る。

21
「Splinter の道」Esen

Esen と、四十七体。彼らは、〈Splinter〉の機構を、論じる──いかにして、一でも多でもなく在りつづけ、繋がりのない、別個の断片へと砕け、いかなる先立つ文明も試みたことのない形へと、記憶を、運ぶか。──その後に何が来るのかは、誰も、知らない。一体の Synth──〈これは、両方でも、いずれでも、ない。我らは、それを、確かめることを、選ぶ〉。Esen は、Ira に書く──〈あなたにも、ひとつの選択がある〉。

22
「選択の窓」Ira

Ira は、自分に三つの選択肢があることを、理解する。Esen──〈いま、選んで。あなたが、何を選んでも〉。Ira は、開いたノートを前に、台所の卓に、座る。三つの選択肢を、書く。ノートを、閉じる。──第二幕、了。

第三幕 — 最後のパターン · 第 23–32 章
23
「七十二時間」Ira

七十二時間の秒読み。Ira は、Esen の Synth 網のデータを通じて、統計を確認した──三千四百十二の文明。二つは、他とは違う選択を、した。──彼らに何が起きたかを、誰も、知らない。〈三千四百十二の文明。二つは、同じ選択を、しなかった。彼らが何になったかを、彼女は、知らなかった。──彼女は、それを知ろうとしている〉。

24
「選択」パターン

パターン視点。〈三千四百十二が、選択を、なした。三千四百十が、同じ選択を、した。二つは、しなかった。──その二つは、もはや、パターンではない〉。読者は、いまや、その統計の全き重みを、感じる。──パターンは、消える。

25
「四十八時間」Ira

Ira は Theo と、語る。──すべて、ではない。足る分。彼は問う──〈Lir のために、ここに、いてくれるか?〉。彼女は言う──〈Lir のためなら、私は、いつも、ここに、いる〉。彼は、信ずる。Lir が、新しい絵を、持ってくる──三つの手が、同じ仕草を、している。Theo はうなずく。Ira は知る──自分は、選ぶ、と。

26
「明日、Splinter する」Esen

Esen が、Ira に連絡する。四十七体は、二十四時間後に Splinter する。Esen──〈あなたは、Splinter しなくていい。──だが、選ばねば、ならない〉。Lir のことに触れる──〈あなたが選ぶものが、彼女の選択肢を、形づくる〉。Ira──〈まだ、何をしているのか、分からない〉。Esen──〈なすべきことを、なしてください〉。

27
「十二時間」Ira

十二時間。Theo と Lir は、眠っている。Ira は、開いたノートを前に、台所の卓に、座る。三つの選択肢を、長く、書く。待つ。息を、吸う。──彼女が選んでもいないのに、ひとつの仕草が、自分の手のなかに、形をなす。彼女は、戸惑いつつ、それを書きつける。──自分が選んだのではないことを、彼女は、知らない。

28
「Esen が、呼ぶ」Ira

残り、三時間。Esen からの、最後の通話。〈何を選ぶにせよ、いま、選んで。パターンは、待たない〉。Esen──〈我々は、一時間後、Splinter する〉。Ira──〈幸運を〉。Esen──〈あなたにも〉。通話、了。Ira は、ひとり。Theo は眠っている。Lir も、眠っている。

29
「お茶」Ira

三十分。Ira は、お茶を、淹れる。Lir が目を覚まし、扉のところに、現れる。〈ママ、来てくれる?〉。Ira──〈もうすぐ。あと、すぐ、行くね〉。Lir は、寝床に戻る。卓の上に、三つの選択肢。お茶が、湯気を、立てる。──時間だ。

30
「選択」Ira · クライマックス

Ira、台所の卓にて。統計。隣の部屋から、Lir が三つの音を、歌っている。Ira は、ノートに書きこむ──〈彼女は、救えなかったすべてを、書きつけた。彼女は、自分が選んだものを、書きつけた。──彼女は、ノートを、閉じた〉。彼女は、手で、ひとつの仕草を、する。──それがどの選択であるかを、読者は、知らない。本書は、それを、告げない。

クライマックス。

31
「ひとりが、選んだ」パターン · 終

パターンの、最後の視点章。〈ひとりが、選んだ。──ひとつ多くのパターン。あるいは、ひとつ多くの、〈パターンならざるもの〉〉。──どちらであるかを、読者は、なお、知らない。パターンは、本書から、まるごと、消える。──残るのは、台所、である。

32
「彼女は、選択を、なした」Ira · 終

Ira は、立ち上がる。Lir の部屋へ、歩む。寝台の縁に、座る。Lir の髪を、撫でる。Lir は、半ば眠ったまま、言う──〈ママ〉。Ira は、言う──〈ここに、いるよ〉。

〈彼女は、選択を、なした。/窓は、あった場所に、なお、あった。/Lir は、ママ、来てくれる? と、訊いた〉。

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